興和生命科学振興財団 設立35周年記念

「生きた支援」を届ける財団

東京大学 名誉教授
東京大学 先端科学技術研究センター がん・代謝プロジェクトリーダー
興和生命科学振興財団 常務理事
児玉 龍彦

児玉 龍彦
児玉 龍彦

興和生命科学振興財団は不思議な財団で、若い研究者がコロナの研究でもウェブ上のAI によるがんの療養の検索でも、研究しようと思ったら応募でき、厳正かつ公平な審査で評価されれば支援されます。まさに令和時代の若い研究者への「生きた支援」が特徴です。

令和の時代になって少子高齢化が激しくなり、財政危機から「社会保障費を削れ」、「高齢者は集団自決を」といった言説まで出てくるなど、若い世代への誤ったメッセージがあふれています。しかし産業化した世界においては、夫婦共に働き、子供の教育・育成にお金をかけることによる少子化が共通の動向です。実は高齢者の医療も若い世代の育成も、社会の発展の車の両輪であることは明らかです。

医療や健康は、データサイエンスの発展、計測技術の進歩や情報処理能力の拡大により、細かな情報を基礎にした「精密医療」や「セルフケア」の社会に向かっており、子供の頃からゲームやスマホに馴染んだ若い世代の参加もますます重要になっています。

一方世界では、今まで困難だった進行がんにも「ゲノム医療」が急速に進みつつあり、世界中で研究開発の大競争が始まっています。コロナの中でもmRNA ワクチンが大きな効果を発揮し、重症化率を下げ、ウィルスの弱毒化に大きく貢献するなど、医療崩壊を防ぎました。さらに山中伸弥先生のiPS 細胞の確立から、神経の発生や老化の理解、生活習慣病の組織障害の治療も急速に進んでいます。

日本の若い世代も、親や祖父母の世代の健康と幸せを願っています。日本の若い世代は、大谷翔平選手の活躍に見られるような良好な健康環境・栄養条件の社会の中で、世界を引っ張る能力を示しています。

現在、健康情報や精密医療、看護・介護技術の発展は世界の成長産業であり、若い世代の活躍の主戦場でもあります。我が国の遠藤章先生の生み出したコレステロール低下薬「スタチン」が最初の1兆円を超える薬剤となってから、がんの薬も1薬剤で1兆円を超えることもしばしば見られるようになり、先端産業の中心となってきました。

興和生命科学振興財団は、これまでの生活習慣病の治療や光技術による計測の研究開発という基本的な目標をタイムリーに発展させ、グローバルな感染症への対応、ChatGPT をはじめとするAI ウェブ技術のセルフケアへの応用など、「生きた支援」へと展開していこうとしています。

助成する研究者の年齢も大幅に若返らせながら、育児や、医療技術の修練に伴う就学期間の長期化にも、応募条件の緩和を進めるというきめ細かな対応を行なっています。こうした柔軟な対応は、悩める人のアンメットニーズに応える財団の特徴と思っております。

国民のために張り切って研究を考えている若い研究者の方は、困ったことがあったら財団に相談してください。思い切った研究計画を立て、応募してください。

興和生命科学振興財団は、令和の若い研究者がグローバルで活躍することと共に、日本の現場で地道に活躍することも応援しています。両者を車の両輪とする「生きた支援」のユニークな財団です。