興和生命科学振興財団 設立35周年記念

令和時代の若き研究者へのメッセージ

埼玉医科大学 副学長
慶應義塾大学 名誉教授
興和生命科学振興財団 理事
竹内 勤

竹内 勤

この度の興和生命科学振興財団創立35 周年、誠におめでとうございます。昭和62(1987)年3 月22日の創立以来、多くの生命科学領域の研究を支援してこられました。受賞されました研究者はもとより、所属する研究機関にとりましても、ご研究の更なる発展にお役立ていただいたのではないかと存じます。

私は、2015 年から4 年間慶應義塾大学病院長、2019 年から同じく4 年間慶應義塾常任理事、2022 年から埼玉医科大学副学長を務めておりますが、興和生命科学振興財団では、平成13(2001)年から平成26(2014)年まで選考委員、平成27(2015)年から令和1(2018)年まで評議員、令和2(2019)年から現在まで理事として財団に関わって参りました。この間、大変優れた研究提案の数々を拝見し、改めまして日本における研究レベルの高さを実感して参りました。

一方、科学技術における世界各国のパワーバランスがここ10 年来大きく変化する中で、学術論文の量や質の評価などにおいて日本の国際的競争力の低迷が2010 年以降、叫ばれています。パンデミック感染症や世界情勢が大きく変動する国際社会の中で、まさに日本の科学技術の真価が問われています。先端的研究や概念・領域を変革するような破壊的研究の必要性は言を待ちません。また、社会に直結する出口戦略を見据えた地に足のついた厚みのある研究も振興していく必要があります。このような激変する世界の中にあっても、間違いなく、将来の日本そして世界の科学技術を創り、支えていくのは日本の若い力であると信じています。なぜなら、日本の若手研究者は、研究目的が明確で論理的に研究を進めていく卓越した能力を有し協調性に優れていることは、海外のトップ研究者が高く評価してくれているのです。

私自身も、今から40 年ほど前、大学院終了後にボストンに留学しました。振り返ってみれば、日本における研究環境とは全く異なる極めて効率的な研究システムと研究者支援に驚きの連続でした。当初感じた言葉の壁や、生活・文化の違いはサイエンスという共通言語によって見事にクリアーされて行きました。障壁が無いとは言えませんが、サイエンスはその壁を簡単に切り崩してくれます。自分の力を信じ、端緒となった研究を大きく発展させ、世界をリードしていただきたい、その夢を是非とも実現していただきたいと思います。挑戦無くしては、夢は実現できません。目の前には、限りないblue ocean が広がっているのです。興和生命科学振興財団が、皆様の夢の実現のために少しでも貢献できることを祈念して、ご挨拶の言葉とさせていただきます。