興和生命科学振興財団 設立35周年記念

令和時代の若き研究者へのメッセージ

慶應義塾大学 名誉教授
興和生命科学振興財団 評議員
望月 眞弓

望月 眞弓

興和生命科学振興財団は35 周年を迎えました。財団は、生命科学の基礎から臨床までの幅広い研究を助成の対象とし、特に先端技術分野の振興をうたっています。まだ緒についたばかりの尖った研究をしていて研究費獲得に苦戦している若手研究者には希望を持てる研究助成です。

財団が設立された昭和62 年(1987 年)は、日本経済はバブルの真っ只中で、ソニーの創業者の一人である盛田昭夫さんの著書「MADE IN JAPAN」がベストセラーとなり、利根川進博士がノーベル生理学・医学賞を受賞された年でした。ノーベル生理学・医学賞といえば、利根川博士の受賞から四半世紀後の2010 年代に入り山中伸弥博士(2012 年)、大村智博士(2015 年)、大隅良典博士(2016 年)、本庶佑博士(2018年)と怒涛のような受賞が続きました。ノーベル賞の対象となった研究は、受賞者が30~40 歳代の頃に行われた研究が多いと言われています。興和生命科学振興財団の助成対象の年齢は43 歳未満となっており、若手研究者の支援が目標であることを明確に打ち出しています。ちなみに43 歳という年齢は、従来40 歳未満であったものをダイバーシティ& インクルージョンの時代に沿って、若手研究者のライフイベントを考慮して3歳延長したものです。このように財団では助成の対象やテーマなどを常に見直し効果的な助成の実現のために尽力しています。さらに令和5 年(2023 年)度の募集からは「ウェルビーイング向上をめざしたセルフケアに関する研究」が新たに助成対象課題として取り上げられました。病気の解明や新薬創製のための研究のみならず健康全体をテーマとする研究にも光を当て、医学・薬学以外の研究者への門戸も開かれつつあります。

博士課程への進学率が低迷する一方、社会システムは高度化しPhD を持つ人材の必要性は高まっています。博士課程で苦しみつつ研究に明け暮れる時間を過ごしたことは様々な課題に直面した時、問題解決の道を見つけ出す力となります。財団の助成を受けた研究者から、日本の、引いては世界の学術界、産業界を牽引する研究者が育つことを期待しております。