興和生命科学振興財団 設立35周年記念

興和生命科学振興財団設立35 周年を祝して

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長
興和生命科学振興財団 評議員
荒井 秀典

荒井 秀典

この度は財団設立35 周年、誠におめでとうございます。35 年前と言えば、ちょうど私が京都大学大学院医学研究科に入学し、北徹先生の元で脂質代謝に関する研究をスタートさせたまさにその頃であります。その後脂質代謝、動脈硬化に関する研究を長年にわたり続けさせていただいたご縁で、評議員として平成29 年(2017 年)より財団の運営に携わらせていただいております。

さて、少子高齢化がますます顕著になる日本においては、少子化により生命科学に携わる研究者数が減少しており、なかでも大学院へ進学する医師が減少傾向にあるという声を多く聴きます。また、研究を行う大学などの公的研究機関に対する国からの予算が毎年減少していることもあり、生命科学に関する研究成果については、過去20 年以上にわたって徐々に我が国の世界的な貢献度が低下しており、日本における基礎研究力の衰退が懸念されているところであります。基礎研究力の低下は、新薬の開発においても欧米諸国の後塵を拝する要因であり、昨今のパンデミック禍で起こったワクチンや治療薬の開発競争における我が国の現状を見るに、近視眼的な考え方に基づかない長期的展望を持った研究への投資が必要であることは言うまでもありません。このような状況において生命科学に関する基礎研究、とくに先端技術分野における学術振興を過去35 年間にわたり支えてきた本財団の活動には頭が下がる思いで一杯です。特に、生命科学における生理活性物質の基礎及びその臨床応用に関する研究や計測と情報の科学技術とその臨床応用に関する研究分野で活躍する多くの若手研究者に対する研究助成は、公的研究機関における若手研究者に対する研究支援が先細る中で、当財団からの研究助成が大きな力となったことは疑うべくもありません。また、これまで助成を受けた多くの研究者がさらにその研究を発展させて、活躍していることは言うまでもありません。最近は若手の研究者が留学することが少なくなりました。もちろんCOVID-19 の影響もあるかもしれませんが、若いときに是非とも海外での研究の実際に触れる機会を持っていただくことは、何事にも代えがたい宝であり、若手研究者には是非留学により研究の視野を広げていただくことを切に要望しております。その点においても当財団の果たす役割は大きいと考えています。今後とも生命科学における重要な財団としてますますの発展を祈念しております。