興和生命科学振興財団 設立35周年記念

良い指導者、創意工夫、そして努力

徳島大学大学院医歯薬学研究部 循環器内科学分野 教授
佐田 政隆

佐田 政隆

初めてサブ4 を達成した
とくしまマラソン2019 後の様子

佐田 政隆

自己ベストを更新した
東京マラソン2019 の記録

1998 年12 月米国留学から帰国して、研究費にも研究スペースにも研究時間にも恵まれず、研究室の立ち上げに悪戦苦闘していたなか、興和生命科学振興財団には格別のサポートをいただきました。今の自分がありますのは、財団のおかげであると深謝いたします。2008 年に徳島大学に、44 歳で全国最年少の循環器内科主任教授として赴任して15 年目になります。こちらに来てから本格的に始めたマラソンの上達した経緯を報告し、研究の道も同じと確信し、令和時代の若き研究者へのメッセージとさせていただければ幸いです。

徳島大学就任以来新型コロナで中止になるまで、11 年連続して、とくしまマラソンに出場しています。出場するからにはタイムも気になります。とくしまマラソン完走者15,000 人以上の記録は翌朝の徳島新聞に掲載され、患者さんや職場のスタッフが注目します。本番で良い記録を出すには、日ごろの練習が大切です。次第に練習距離が延び、早朝や夜、休日に時間を見つけては、月100-150km 走るようにしました。学生時代は柔道部に所属し、走るのは決して得意な方ではなかったのですが、練習の成果で毎年タイムは速くなり、今のところ、医局員や殆どの学生には負けていません。50 歳で臨んだとくしまマラソン2014 では、4 時間7 分と自己最高記録を大幅に更新することができました。いよいよ念願のサブ4(4時間切り)が射程距離に入ってきたと思い、東京マラソン2015 には万全の態勢で臨みました。走行経過がFacebook でリアルタイムにup されることも刺激になり、前半、今まで経験したことがないほど絶好調でした。ようやく長年の夢が叶うと期待しましたが、後半35km 過ぎから一気にペースダウンしてしまい、4 時間9 分という非常に無念な結果に終わってしまいました。

このような体験のなか、加齢に伴う体力の衰えもあり、サブ4は一生不可能ではないかと、なかば諦めていました。ところが、とくしまマラソン2016 で52 歳にして遂に、長年夢であったサブ4を達成できました!湿度70%、最高気温23℃と蒸し暑い過酷なレースで前半ペースがあがりませんでしたが、後半のペースダウンがありませんでした。3 時間52 分22 秒と前年の記録を30 分も短縮する夢のようなタイムでした。

この年は、例年と異なることが三つありました。第一に、プロのトレーナーである金哲彦先生の個人レッスンを東京で受けました。90 分間程度の指導でしたが、自分が自己流でやっており、無駄な力を出していたのかがよくわかりました。練習で飛ばす必要はなく、42.195km を5 分30 秒/km のペースで如何に疲れないように走るかが肝要であることを良く理解しました。また、練習法についても適切なアドバイスをいただきました。第二に、マラソンに関する本、栄養学、運動生理学の本を何冊も読みあさり、その研究成果を練習と体調管理に活用しました。第三に、大会3 カ月前は、練習量を大幅に増やしました。平日は4 時半に起床して仕事前に10km、週末は20km、出張先にも靴、トレーニングウエアを持ち込みコツコツ走りこみました。指導者、創意工夫、努力、この3 点が長年の夢を達成させてくれたと思います。

その後も、新しい練習方法、研究を続け、大会前は練習量を更に月350-391km に増やすことによって、サブ4 を維持することができました。そして、東京マラソン2019 ではみぞれの降る過酷の条件下であったものの、55 歳にして自己ベストを3 時間48 分49 秒と更新することができました。下の図のように、自分でもよくやったと信じられない程、25km 過ぎからゴールに向かってペースをあげていき、教科書通りのネガティブスプリットを達成することができました。その時の感動は未だに忘れません。

研究も同じですが、「練習量は裏切らない」ことを再認識しました。若手の研究者の皆様も、今後、高い志をもち、良い指導者を見つけ、創意工夫と努力を重ねて、夢を叶えていってほしいと思います。